2012年07月22日

教員の不祥事、空切る対策 心のケアに目を向けて(尾木直樹)

信濃毎日新聞の報道より引用

============

コンパス=教員の不祥事、空切る対策 心のケアに目を向けて(尾木直樹)

2012(平成24)年7月11日(水) 朝刊10ページ 教育1面 M1版


 昨年、東海地方の県の教育長があまりにも立て続けに起きる教員の性的な不祥事に「万策尽きた」と発言し、注目を浴びた。それほど教員のセクハラ・わいせつ事件は、ある地域や県に限ったものではなく全国的な問題であり、教育行政が力を注ぐ研修などの「対策」も空を切っている。一体何が問題で、解決への展望はあるのだろうか。
 そもそも教員によるこの種の事件には、世間一般に発生しているものとは大きく異なる、明確な特性がある。その一つは、ほとんどのケースが盗撮やわいせつ行為などの対象が成人ではなく自校の児童・生徒であるということ。つまり、性的興味・関心が成熟した大人の女性に向くのではなく、校内外の子どもたちに限定されている点である。

 なぜ、最も大切にしなければならないはずの子どもたちに向くのか。教員は職種的特性の大前提として、“子ども好き”である。子どもが嫌いでは、いくら教えることが好きでも学校の教員にはならないであろう。従って“子ども好き”という教員の職業的特性そのものが、教師のセクハラ・わいせつ事件を読み解き解決へ導く鍵を握っているように思える。

 通常の場合、教員の“子ども好き”という特性は、子どもたちへの神聖で崇高な「教育愛」として、教科指導、児童・生徒指導、部活動など教育活動全般に発揮、開花される。それこそが教師のやりがい、生きがいでもある。

 ところが、あまりにも過重なストレスや閉鎖的空間に教員が閉じ込められると、心のバランスが崩れ、普段は「教育愛」の影に隠れている「性愛」が顔をのぞかせる可能性があるではないか。そのきっかけになりうる危険に満ちた性風俗や性文化が、今日のネット社会には満ちあふれている。教員とて、それらの危険な誘惑と無縁とは言えまい。

 解決策としては、「ストレス過多の解消」「職員室の内的・外的風通しを良くする」「教員の社会生活、市民生活への参加保障」「メンタルケアの充実」などに行政は心をくだくべきであろう。モラル喚起の研修に次ぐ研修や処分の怖さをちらつかせるだけでは、どれだけ対策を強化しても効果は上がらないのではないか。

   (おぎ・なおき 教育評論家・法政大教授)


タグ :コンパス

同じカテゴリー(大津の中2男子自殺)の記事
 大津の中2自殺受け全国緊急調査へ 政治主導で異例の対応 (2012-07-22 00:58)
 終業式で校長「悔やみきれぬ」 (2012-07-22 00:58)
 奥村文科副大臣、きょう大津へ (2012-07-22 00:57)
 遺族、越市長謝罪を拒否 「本当の意思か分からぬ」 (2012-07-22 00:57)
  「加害」3人を最後に聴取へ 滋賀県警方針  (2012-07-22 00:56)
 阿部知事、教育行政の責任所在「議論を」  (2012-07-22 00:56)

Posted by usiki@しののい at 01:00│Comments(0)大津の中2男子自殺
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。