喜多明人先生の学習会を開きました

usiki@しののい

2011年09月16日 06:26

子どもの権利条例学習会
テーマ 「子ども支援のまちづくり」と条例」
(子どものびのびネットワーク学習会 平成23年7月24日)
会場:長野県弁護士会館 参加費:カンパ

※ いち参加者による自己流まとめです
それぞれのフィールドから集まった参加者が車座で喜多先生と学びを深める会となりました。

<喜多明人先生講義>
テーマ:「子ども支援のまちづくり」と条例
喜多明人氏・・・早稲田大学文化構想学部教授。もともとは学校建築が専門。まちづくりや子どもの権利に取組んでいる。
活動:子どもの権利条約ネットワーク事務局―シンクタンクのような活動をしている。
 今回、長野県「子どもの育ちを支える仕組みを考える委員会」委員長となる。任期3年。

概要:
1:子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会の立ち上げとこれから
2:いま、子どもたちは―直面する課題
3:なぜ、子ども支援なのか
4:なぜ、まちづくりなのか―子どもと「共に生きる」まちをつくる
5:なぜ、条例なのか
6:質疑応答

<喜多先生講義>
1:子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会の立ち上げとこれから
<喜多先生講義>
1:子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会の立ち上げとこれから


長野の子どもにとって何が大切か
~地域発・長野発の手法~
・長野県で子どもの権利条例制定をにらみ、「子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会」が開始(H23.6月~3年間の予定)。15名の委員(3名公募の一般委員)と事務局、子どもに関わる県庁内各部署。
・3年間で、「現状、実態把握」→「長野の子どもたちに何が大切か県民議論」→「県議会全会一致の条例制定」を目指している。1年間で作れという無謀な自治体もあるなかで、じっくり取組める体制がある。
・自分としては、各委員と行政のコーディネーターとして委員会で活動していきたい。
・各委員、行政には、それぞれの現場のコーディネーターとして、委員会にアイディア、現場の意見を持ってきて欲しいと思っている。
・ 青少年健全育成条例を作らずに、子どもの権利条例を作ろうということ・・・行政にまかせきりにせずに、地域で子育て、子育ち支援をやっていこうという長野らしい視点がある。
・ 県民参加、子ども参加で議論をして、子どものためにという流れのなかで、県議会の全会一致で条例が可決されることをめざしたい。
・ 全国の状況・・・子ども条例が100を超えて各自治体で制定。
・ タイプとしては3タイプ「青少年健全育成のための条例」「子育て支援のための条例」「子ども支援のまちづくりのための条例(川崎市タイプ)」ある。3つのタイプが混在した条例も。川崎市タイプの条例は30ほどある。現在松本市、茅野市で県に平行し子ども条例を作る動きがある。

NPO法人 子どもの権利条約総合研究所 
参照 自治体条例制定一覧
→ http://homepage2.nifty.com/npo_crc/siryou/siryou_jyorei.htm

2:いま、子どもたちは―直面する課題
自己肯定感の低下と自己評価の低下がリンク
・自己存在感の危うさ。
・少年事件、非行の質の変化―ゆきづまる「青少年健全育成」
・2007年ユニセフ調査 「孤独を感じる」と回答した子が3割を占める(諸外国は1割前後)。日本が突出している。
・優しくて良い子のタイプで、受け身。周囲にあわせて偽りの自己を形成し、苦しんでいる。

子どもの身近な人間関係不全の問題
・社会的存在としての子どもの危機がある。
・虐待・・・親子関係不全。子ども受容の拒否。受容され愛されて育つ権利が子どもの権利条約に規定されている。
・友達関係の不全、過度の競争教育(国連による日本政府への勧告が3年連続で出ている)
・基本的な人間関係をつくることの困難さ(大学の便所メシ問題)

3:なぜ、子ども支援なのか
肯定できる自己の形成とおとなの支え=子ども支援
・子育て、教育、健全育成により「教えすぎ」「背負い込み過ぎ」の問題
・「教えられて育つ=教育を受ける権利」「自己の意思と力で育つ=自己形成への権利」
・課題・・・子どもが自分の意思と自分の力で成長していくこと
・必要な支援・・・「待つ支援」「聴く支援」 子どものチャレンジを受け入れ、失敗を受け入れる支援観。
・課題・・・力のない存在としての(従来の)「子ども観」(教え育てる対象の子ども)
・必要な支援・・・既存の子ども観をはがし、子ども自身の力を見出していく「子どもディスカバリー(再発見)」

4:なぜ、まちづくりなのか―子どもと「共に生きる」まちをつくる
・課題・・・大人の意思、大人の要求が当然に子どもに押し付けられている。その子にとっての当然のライツ(権利)、子どものニーズを社会的に認めることが必要。
・子ども政策の転換「イニシアティブ転換―青少年健全育成から子ども若者の自己形成、社会形成支援へ」「子どもへの直接支援―子育て支援から子ども支援へ」
・子ども参加のまちづくり・・・「子ども期」にどのような地域と出会うか
いつか戻ってきたい「地域」←→二度ともどりたくない。出て行きたい「地域」

5:なぜ、条例なのか
行政の課題①・・・行政の評価主義・・・子ども支援の成果をどう評価するか? 杉並区では、子ども会議のサポーターだった子どもたちが、10年経ち何人かが行政に入り、街づくりの中心で活動している。10年かけて街づくりをしたい、できる子どもが育つことが成果。
行政の課題②・・・トップダウンの行政・・・首長が変わると、施策の方向性が変わるという不安定さ 法律(条例)による安定的なとりくみが大切。行政規則でいくらでも変えられてしまう。
行政の課題③・・・タテワリ行政・・・子どもは1人なのに総合的な運用ができない。内閣府から「子ども・若者ビジョン(大綱)」が示され、総合計画作成の流れができた。

6:質疑応答
・委員会の役割は?―県民議論を起こし、対話をしていくことが目標。各部署の責任者が横断的に集まって議論する。内部調整に終始してしまうような仕組みにはなっていない。
・自己肯定感をどう育てるか? 学校の内申等価値評価の課題は?―制度的な問題はある、しかし現場の教師も親も疲弊している中では、家庭や学校を支えていけるような街づくりこそ必要である。
・草の根の団体の意見を反映させたり、アンケートが届かない子どもの実態を知って欲しい―各委員がそれぞれコーディネーターとしての役割を持つこと。マイノリティの声はヒアリングも必要。
・子どもに権利は必要ないという潮流をどうするか―60年代、70年代は世界中で学生運動が盛り上がった。日本は最終的には機動隊で運動をつぶしたが、欧米では、若者の意見表明をシステムとして社会に取組んだ点が違う。例えば仏では高校生の生徒会連合があり、意見表明が教育の安全弁として機能。社会参加できるということと自己肯定感が高いということは相関していくと思う。

<子どものびのびネットワーク 佐藤代表のまとめ>
・ものすごい数の部局が、ものすごい事業をやっていくことになると感じました。県議会で全会一致が取れるということは、しんどい道程かなとも思うが、弁護士会の子どもの権利委員会としては是非ともそこに向けて頑張っていきたいと思います。


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